”ジェネレーティブデザイン”という言葉が世の中に出回り始めたのは、つい2.3年前の事である。
あまり聞き慣れないこの言葉は、”ジェネレーティブアート”という言葉から派生したモノで、簡単に説明するとコンピューターが設計をしたデザインの事だ。直訳で「生成される設計」。
条件や仕様などを人間が入力し、その要件定義に応える形でコンピューターが形を提示する。
いつかは実現されるだろうと思っていた技術ではあるが、それが実用化された事により多くの注目を集めた。人間の設計思想では思いもよらないアプローチと成果物の形状を生み出し、それらは人間の経験の積み重ねと思考を容易く上回る。
これまでに創造、デザイン、クリエイトされてきたビルや橋、車や機械、製品やデバイスなどの全てに共通する事は、どれも生命は宿っていないという事である。
しかし”ジェネレーティブデザイン”では、自然とテクノロジーを融合させ、物体に生命を宿らせようとしている。言ってしまえば、有機物のデザインをも手がけようとしているのだ。
このように、デザインを生態系のように考える方法が急速に存在感を増している。
何度も何度もシミュレーションを繰り返し、そのデザインのゴールに向かって最適化していく事は、生き物が進化していく事と何ら変わりはない。
モノの形をコンピューターが決める、という未来には期待と反骨精神の相反する感情を持ってしまうが、人間の役割は、コンピューターともコミュニケーションをとって、的確に要件定義を伝えるという事だろう。
目まぐるしく進化していく技術はジェネレーティブデザインだけでなく、IoTや3Dプリンターなど、様々である。このまま進化、発展が止まらず進んでいけば、将来、未知の生物のような形をしたビルや橋が街中に溢れる日が来るかもしれない。