バーチャルシンガーとは、初音ミクを始めとするクリプトン・フューチャー・メディアのボーカル用音源「バーチャルシンガーソフトウェア」及びそのキャラクターのことである。本レポートでは、その中の一人、「重音テト」について触れていこうと思う。
重音テトは、2008年4月1日のエイプリルフールに際して、電子掲示板の2ちゃんねるにて創作されたバーチャルシンガーである。2ちゃんねるの利用者らが好き好きに提案したキャラクター名、髪型や性別、年齢、特技などの設定がランダムに選ばれて一つのキャラクターに集約され、合成音声風に加工した歌声のサンプルボイスと共に、ソフトウェアの発売予告ページを装って公開された。その設定を見てみると無茶苦茶なものが多く、得意なことが「レンタルCDの延長」、苦手なことが「歌」、決め台詞が「君は実に馬鹿だな」などと、非常にユニークなものが多い。
嘘として作られた存在しないソフトウェアであったため、そのままエイプリルフールネタとして役目を終える予定だったが、のちに有志たちにより音源が作成され、歌声合成ソフト「UTAU」などを使って本当に歌えるキャラとして復活を遂げた。公開年より様々な楽曲に用いられたり、二次創作が多く作られてきた。さっぽろ雪まつりにおいての雪像作成、ねんどろいどの販売、様々なイベントへの出演などにより、着実に知名度を上げ、ネット民に愛されてきた。
重音テトが大きく知名度を上げたのは昨年である。昨年Youtubeにて投稿された原口沙輪の『人マニア』が大バズりし、その映像とともに重音テトは多くの人の知るところとなった。私が重音テトを知ったのも当楽曲である。
2ちゃんねるの利用者による「遊び」を発端としてつくられたキャラクターだが、遊びに本気になる人が現れ、実際に使えるソフトウェアとなり、多くの人に愛されるようになった、重音テトを巡るこの出来事はとても興味深く面白い。