育成していく楽しみ。
自分の手で育てていったという達成感。
これを上手くビジネスにつなげているのは、
私が中学生のとき(はるか17年前)に登場した「たまごっち」を
はじめとし、今はアプリになっているような持ち運んでお世話ができる、
携帯ゲームをまずは連想する。
しかし、そもそも現実の人間を応援して育成していくような手法もある。
代表的なものとしてはAKB48などのアイドルだと思うが、今回は一風変わって、
スポーツについて取り上げたいと思う。
みなさんご存知のとおり、私はフィギュアスケーターの羽生結弦選手のファンだ。
オタクとまでいえるほど、情報を追いかけているわけではないが、
行ける範囲で試合があれば、実際に現地に見に行きたいと思うぐらいには応援している。
私が彼に注目しだしたのは、まだジュニア時代のことであった。
まさか、日本の一番手として、オリンピックに出場し、初めての代表で金メダルを得るとは、そのときはつゆとも思っていなかった。
ただ、元気いっぱいで一生懸命な、応援したくなる選手だなあと感じだのが第一印象である。
さて、羽生選手は、今や世界的なスターになってしまった。
スケートに興味のない人でも、オリンピック金メダリストといわれれば、
名前ぐらいは聞いたことがあるという現状だ。
自分がずっと応援してきた選手がすばらしい結果をおさめ、有名になっていくのは
うれしい反面、もう自分の手を離れてしまった(もとから自分のものではないのだが)
ような気持ちになってしまう。
そこで、ファンたちは試合やショーを見に行ってお金を落とすのをやめるのかというと、そうではない。
新たなターゲットを探しにいく人もいるのである。
有名なシニアの選手を応援するだけでなく、次世代のエースになってほしい、ジュニア、ノービスの選手を応援するには、大きな大会ではなく地方の競技会まで足を運ぶことになる。恐ろしいことだ。
こうして、コアなスケートファンとして、どっぷり浸かっていくのだろうか。
奇しくも、今年からジュニアグランプリシリーズがYouTubeでライブ配信されるようになった。日本で行われる名古屋大会は即座にチケットが売り切れる人気である。
オリンピックが終わって、ブームが落ち着くと思いきや、
次のオリンピアンは誰になるのか、いち早く目をつけたいというファンでいっぱいである。
ネットでの無料ライブ配信のように、比較的ハードルの低い形で応援できる環境が整った今、選手としても自分の演技を見てもらえるという機会が増えて、励みになっていればと願う。
さらに、Twitterやインスタグラムなどをやっている選手も多い。
アップされた近況や写真に、「がんばってください」などのコメントを寄せることによって、ファンとしては直接言葉をかけることができる喜びがある。
もちろん、寄せられるコメントは好意的なものばかりではなく、
たまに目を疑うようなものもある。
選手にはリスクを背負わなければならないところでもあるが、
それでも、ファンが育てていくという様式が形成されつつある今、
ファンと選手が、一定の距離を保ちつつも、コミュニケーションをとり、
育てていけるという気持ちになれる仕組みは、バーチャルの世界のものだけではないのである。