ある日、目が覚めたら足の付け根からつま先まで無くなっていた、腕がなくなっていた。
そんな世界を皆さんは想像したことはあるだろうか?
パソコンでキーボードを打つ、スマホでメールを送る、食事をする・・・・
働くことは勿論、日常生活の全て人の手を借りて生きていかなければいけないだろう。
今まで自分の出来ていたことが出来なくなる、そんな世界は暗転するに違いない。
だが稀ではあるが、確実に、「手指を失う」という現実は存在する。
業務中の事故での手指切断、交通外傷、先天的な四肢の欠損。
「五体不満足」の著書で有名な乙武洋匡さんも、先天性四肢切断という病気で両手両足がない。
そんな様々な理由で手指の欠損に直面した患者に、代わりとなる「手」となるのが「筋電義手(きんでんぎしゅ)」という機械である。
筋電義手は筋肉が発する微弱な電気を感知し、その出力が一定の閾値を超えることでスイッチをオン・オフさせて動作を行う。内蔵されたモーターにより、ものを掴む・離すという動作(把持)ができ、自らの意思を義手に連動させることで、擬似的に動く手を再現する。
だが欧米では負傷兵らを対象に開発が進み、実用化されている一方で、日本では普及していない現実がある。
それはなぜか。
1.筋電義手は高価(150万以上)
2.公的資金の給付の制限(身体障害者福祉法では筋電義手の交付は基準外交付として認定。労災による交付も,両側上肢切断の片側のみ交付が認められている)
3.義手の訓練施設が大都市に偏在(訓練が出来る医療施設は全国に20箇所)
筋電義手に対する公的資金の給付や医療やリハビリテーション施設の設置は、全て行政負担になる。これらを維持するのは、費用対効果の面で採算が合わない。
では「筋電義手」が高価でなくなったら?と考えたのが
チームExiiiである。
Exiiiの開発する筋電義手は従来より圧倒的に安い4万円で提供することを目指している。
低価格を実現させたのには3つのアプローチがある(動画参照)が、圧倒的なのは
1.電気信号の処理をスマートフォンで代用(従来は専用の装置が必要)
2.全ての部品を3Dプリンタで構成することを前提に設計
というアプローチであろう。
スマートフォンや、3Dプリンタという今を代表する最新テクノロジーを用いたことで開発コストを抑え、価格に反映させたいい例だと思う。
低価格にすることで給付金なしでも自費での購入が可能になる。また専門的な医療施設だけではなく、中小規模の訓練施設での導入も容易になることが予想される。
また機能面に加えて外見がスタイリッシュなのにも注目して頂きたい。
従来の筋電義手は「周りからの視線が気になる」、「偏見の目で見られる」という声を代弁し、いかに本物の手に似せるかに注目を置かれていた。
しかしExiiiが開発した「Handie」はどうだろうか?
スタイリッシュでカラフルなHandieはハンディキャップを個性として受容し前向きに楽しく生きていこうとする姿勢が伺える。
Handieを装着し、仕事をし、当たり前の生活を今まで通り送る。
今まで生活保護や障がい者年金を受けてた人が、納税者になる。
技術の進歩と低価格化により、障害者自らが自分の体を受け入れ、社会で受け入れられるそんな個人や社会の未来に期待したい。
<参考URL>
http://www.mirairyo.com/handie/