パナソニックが介護ロボットの開発戦略を進化させている。
ベッドから高齢者などを車いすに移動させるため、当初は人の背丈ほどある双腕型のロボットを想定していたが大きすぎるなどの理由で断念。安全性や価格、使い勝手など現場での使いやすさを追求した結果、2014年6月から発売するのがベッド型の「リショーネ」だ。
日本が主導した生活支援ロボットの国際安全規格の認証も取得している。
ベッドが真ん中から2つに分かれ、片方の背中が持ち上がりリクライニングシートとなり、車いすになる。ベッドから高齢者を抱き上げる人の腰の負担を楽にする目的も大きい。
「リショーネ」は「離床」の名前の通り、中重度の要介護者が寝たきりにならず、ベッドから車いすに移動するのを楽にし、自立を支援し移動の自由を手に入れてもらおうというものである。
価格は約100万円。
離床アシストベッド リショーネ [Panasonic] – YouTube
車いすへの移乗を支援する同社の介護ロボットの原型は、
2006年ごろに開発したトランスファー・アシスト・ロボット(TAR)だ。
リショーネとまったく形が違う。人の背丈ほどあるいわゆる双腕型ロボットである。
2本の腕を高齢者らの体の下にいれ、腕で持ち上げて車いすに移す。人の動作をロボットにそのまま置き換えるという発想だ。
これは、展示会に出すと「こんな大きなもの部屋に入らない」など介護関係者から総スカンを食った。
開発者は、「ヒト型にこだわるのはやめよう。現場の意向を最大限に取り込もう」と軌道修正し、様々な案から一体化したベッドと車いすの分離方式にたどり着いたのだ。
リショーネはまず中重度の要介護者を対象に施設向けに販売する計画。すべての人が利用するのではなく「1割程度の人に使ってもらいたい」ということである。
リショーネが現場に受け入れられ、普及するかはわからない。「もっと安く」という声もある。機能を単純化したために、中国メーカーなどにまねされるリスクはある。しかし、「まず新分野を確立する。まねされるのは市場があるということ」と考えるのがパナソニックである。
日本の大手メーカーが考えられる技術をすべて盛り込み、介護現場を技術力をアピールするショールームにする時代は終わった。リショーネにロボットの面影はもはやない。地味な介護機器だ。
介護現場は外国人に頼らないと回らない時代が目の前にある。介護する人がいなくなる。1週間のうち5日をロボット、1日外国人、日曜日だけ日本人が介護する時代が来ると言われているそうだ。
普及に向けた課題は、「介護の現場の実情と技術の両方がわかるコーディネーター」の存在だ。
介護機器は健常者が開発し、使うのが認知症の高齢者などというケースが多いのも課題だ。家電製品なら開発者が自分の使い勝手の良い製品を作ればいいが、認知症の人の意向を聞き取るのは難しい。
産総研の大場氏は「ロボット化は技術的にはできる。あとはサービスシステムをどうデザインするか」と語っている。それはコストダウンであり、安全規格の詰めであり、開発者、施設、利用者の使い方の仕組みであり、水平展開の仕方であろう。
技術だけでは突破できない分野は日本は必ずしも得意ではないといえる。
それでも、介護ロボットは高齢化社会先進国の日本が世界に貢献すべき分野だ。
日本のものづくり力の進化が求められている。
http://panasonic.co.jp/ppe/resyone/index.html