G22014 デジタルと仮想現実のデザイン

 デジタルデザインの業界はデジタル機器を対象としてデザインによる価値創出を目指してきたが、近年デジタル業界の中にはVRやメタバースといったバーチャル空間の概念が台頭してきた。こうした仮想現実がデジタルデザインに与える影響と改めてデジタルデザインが空間に与える影響について考察する。

 メタバースは現実世界に代わって人と人が交流することが出来る場として機能することが出来、デジタル上においても現実で人と接することに近い表現が可能になっている。既に現実の大学や都市をメタバース上に構築している取り組みや、もう一つのオフィス空間としてメタバースを活用している企業も増えてきており、コロナ禍で広まったリモートワークといった自宅からでも仕事に参加できる働き方の改革にもメタバースが大きく活用されている。メタバース市場に加えてVRゲーム機器などのデバイスも発売されて、より人々が仮想現実に触れる機会は増えている。デジタル分野が仮想現実も内包している以上、デジタルデザインもこうした仮想現実の取り組みに対してより積極的にアプローチを行っていく必要があると考えられる。

具体的に仮想現実のデザインとは何かを考えると、現時点でも3Dのバーチャル空間をデザインする仕事や仮想世界内での買い物などのコンテンツ制作、ユーザーのためのUI/UXデザインなどデザインとしての役割は多く存在している。メタバース上での快適な動作や利便性を向上させるコンテンツが現状特にデザインに求められているものであると言える。メタバース事業全般が今後も拡大していくものとすれば、これらのデザインの仕事は今後さらに需要が増していき、仮想現実をデザインすることは人々に欠かせないものになっていくと考えられる。将来的にVRやAR等のバーチャルの表現技術がさらに発展していけば、現実世界において物理的に不可能といった制限に縛られないより自由で新しいデザインの枠組みが可能になるのではないか、既存のデザイン概念にはないものが生まれてくるのではないか、といった予想が出来る。デジタルデザインは仮想現実の台頭によりさらなる役割を求められるようになっていくと考えられる。

 デジタルデザインは主にデジタル機器やインターネットに関わるものをデザインする仕事が多く、立体的な空間との関わりは希薄な部類だった。しかしVR機器が今後より普及していき、バーチャル空間のデザインを求められる需要がより拡大していけばデジタルデザインも平面上のものから立体的なデザインがメインとなっていくのではないだろうか。人々の生活に仮想空間の技術が取り込まれていき、我々の生活も日々常識が変化していく現代においては、デジタルデザインの在り方も時代に合わせて変容することは避けられないと考えられる。そうした中で私は、今後の授業課題においても仮想現実を用いたデジタルデザインの新しい取り組みを模索していきたいと考えている。既存のデザインの形をメタバースやVRを用いた仮想現実にどう落とし込んでいくかといった、時代の変化に合わせていく方法も同時に考えていかなければならない。デジタルの進化は我々が想像するよりもずっと早いため、時代の流れを見据えつつ最先端の情報を把握し、いち早くその仕事に関わっていくことがデジタルデザインの使命でもあるように感じた。

参考サイト

総務省|令和5年版 情報通信白書|メタバース (soumu.go.jp)

メタバースが変える未来 | NHK | WEB特集

https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202403251050/detail/

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