チャリティTシャツ、誰もが一度は見かけたことや手にしたことがあるのではないだろうか。今回のテーマである支援事業とデザイン。支援事業と一口に言っても環境支援、地域支援、就労支援等、様々だ。支援事業と聞いて、私の頭の中に最初に浮かんだのはチャリティだった。そして、もうひとつの要素であるデザイン。チャリティTシャツは、私達の回りにあるチャリティとデザインが結び付いているものとしてとても身近だと私は考える。そして、チャリティTシャツの数ある企画、企業の中で目に留まったのが、京都発のソーシャルウェアブランド「JAMMIN」だ。
JAMMINは1週間限定でデザインTシャツを販売し、NPOへの寄付金を集めているブランドだ。同じ場に居合わせた人たちが、即興で音楽を奏でるという意味の「JAM SESSION(ジャム・セッション)」がブランド名の語源となっている。
その名の通り、NPOやNGOのコンセプトやメッセージをヒアリングし、それを元にアーティストがデザインを描き起こしたオリジナルプリントのTシャツを作成し、通販サイト上で1週間限定で販売している。2014年のオープンから今までに、100を超えるNPO、NGOとコラボレーションし、500万円以上を寄付している。(2016年4月現在)
チャリティの仕組みは、Tシャツとスウェットの場合700円が、小物類の場合は100円が団体に寄付されるというものだ。全商品が対象で、ほとんどの商品において販売価格の約20%がチャリティにまわる。Tシャツの値段は、若い世代が通販でも買いやすい価格に設定されている。まずは多くの人にチャリティの体験をしてほしいという思いから、限界まで値段を下げている。
一見、このような取り組みをしている企業は他にも数え切れない程あるように思えるが、JAMMINには他の企業とは違う特徴がある。まず、1週間限定でTシャツを販売する、という所が気になった。日本には約5万のNPO、NGOがある。社会問題に興味のなかった人たちに対して、ひとつでも多くの団体を知ってほしい、という思いからあえて毎週違う団体を紹介する、という形をとっているという。この試みは今までに無かった珍しい形だ。1度ブランドに興味を持った人がまた次に購入する際、その時コラボレーションしている企業を知り、それぞれの団体の活動内容に興味を持つことができる。
そして、JAMMINのTシャツやwebサイトは若い人、つまりはあまりチャリティに馴染みのない層でも興味を持つことができるデザインになっている。実際、購入者の中には、Tシャツを買ったことをきっかけにNPO、NGOに興味を持ったという人も少なくないそうだ。チャリティを全面的に押し出したデザインではなく、普段着られるスタイリッシュなデザインにすることで、買い物をする中で社会貢献できるというシステムが成り立っている。私自身もあまりチャリティTシャツは着たいと思えるデザインがない、というイメージを持っていたが、JAMMINのTシャツはシンプルに服として見た時に欲しい、と思えた。
そして、Tシャツの売り上げを直接国や施設等に寄付をするのではなく、NPO、NGOの活動費として寄付をするという形をとることで、今までチャリティに興味が無かった層に様々な活動を知ってもらうきっかけを作る。購入者とNPO、NGOとの橋架けのような役割をJAMMINは果たしているのだ。チャリティ活動になんとなく興味があっても、なかなか踏み出せない、という人に取っては素晴らしいシステムだ。
JAMMINそのものは、NPOとしてではなく民間企業として経営されていて、事業をより拡大させることに挑戦している。チャリティを文化として広げるために貪欲に事業拡大しようという試みに感銘を受けた。
一流企業や芸能人が何千万、何百万という単位で国や施設に寄付金を贈ることは誰でもできることではないしとても大きな効果がある。だが、一人一人ができること、気づいた時から誰でも始められることを提示してくれるサービスがもっと広まれば大きくなくても何かを少しずつでも変えていける力になるはずだ。JAMMINのような自然にチャリティを生活に組みこめるシステムを実現している企業が今後もっと色々な層に認知され、広がって欲しい、と私は考える。そうなれば、少しずつではあるけど、世界はもっと暮らしやすく、より良くなるのではないだろうか。