G15-043 “デジタルデザイン論とは”

“デジタルデザイン”という言葉に纏わる事業やデザインは、世の中に巨万と存在する。

これまでレポートで取り上げてきた題材は全てがこの言葉のように流動的なものであり、流動的なデザインというのは最終的な完成系が示されていない事とほぼ同義である。
デジタルのデザインに必要なマテリアルは変化のないものばかりで、物理的にも色褪せていくことがない。
そもそも、デジタルとは「コンピュータで扱える情報の形」と広義に捉えられており、その定義に基づいてデザインをしていかなければならないのが、”デジタルデザイン”の世界の難しいところである。

また、「色褪せないデザイン」と呼ばれるものは、月日がたってもそのデザインの素晴らしさが保たれたままで、物理的な話ではない。
長年愛される「色褪せないデザイン」にするには、やはり何かしらの信念に基づきデザインしていくことが重要だと私は考える。
そこで紹介するのが、英国政府の中にある”政府デジタルサービス”という部署が作った「デザイン原則の10箇条」である。

1.まずニーズからはじめる
自分たちのニーズではなく、ユーザーニーズから。
本当のユーザーを理解し、そのニーズを知る。想像や思い込みではなく、ちゃんとデータで。

2.なんでもかんでも手を広げず、するべきことだけをする
政府がしなければいけないことだけをし、他の人がすでにやっていたら協力する。

3.データをもってデザインする
試作し、実際のサイトで実際のユーザーにA/Bテストを行い、その結果をデザインに活かすやり方を理解する。

4.シンプルにすることに心血を注ぐ
「シンプルであるように見える」ものを作るのは簡単だが、本当に何かをシンプルにするのは大変なこと。
しかし、それが成すべきことだ。

5.繰り返し、繰り返す
小さく始めて、実ユーザーでテストして、フィードバックを得ながら改善を繰り返していく。

6.受け入れられやすいものに作る
アクセシブルなデザインは良いデザイン。どんな人でも(ネットに慣れていない人にとっても)できるだけ読みやすく、判別しやすいものにする。
それによって多少エレガントでなくなるとしても、そうするべき。

7.コンテキストを理解する
PCのディスプレイのためにデザインするのではなく、人のためにデザインする。
どんな場所で、どんなデバイスで、どんな人が使うのかを、真剣に考える必要がある。

8.デジタルサービスを作るのであって、Webサイトを作るのではない
人々に対するサービスはWebサイトだけで完結するとは限らない。検索エンジンも関係するし、リアルな場も併せて使う必要があるかもしれない。
どんどん変わりゆくそうした状況を理解し、それを把握してデザインしなければいけない。

9.一貫しているべし、単に統一するのではなく
使う言葉やデザインをさまざまな場所で同じにするべき。そのほうがユーザーには使いやすくなる。
それが難しい場合でも、背後に一貫したアプローチがあれば、ユーザーが理解しやすくなる。
ガイドラインを暗記するだけでは良いサービスは作れない。

10.オープンにすれば、物事はもっと良くなる
可能な限り、自分たちのやっていることをオープンにする。同僚に、ユーザーに、世界に。
コードも、デザインも、アイデアも、狙いも、失敗も。
そうすれば、凡ミスが見つかり、もっと良い方法がみつかり、全体のレベルが上がっていく。

(“web担当者フォーラム”より、引用)

政府ならではの部分も少々見受けられるが、このように明確な信念の元制作されたデザインは、やはり月日が経っても「色褪せない」と言われるものになるのだろう。
そして、この「デザイン原則の10箇条」は、どんなデザインにも応用されるのではないだろうか。

以前、私が紹介した「福島治」という人物は、コミュニケーションデザインという枠組みでデザインの力を社会の課題解決に役立てる事に執念を燃やしていた。
彼の職業はグラフィックデザイナーなのだが、デザイナーとして沢山の支援事業を成功させている。
彼の行った事業は、社会が抱えている問題や、光の当たらない人たちへの手助けだったりを、自らの武器である”デザイン”の力で解決に導いてきた。

その活動により、デザインという分野がより広い視野で捉えられるようになった。

それは、彼が社会のニーズを感知し、自分が出来る事とそのニーズを掛け合わせ、データを出し、形にした。
その結果、彼の武器であった”デザイン”という分野が広く受け入れられるようになった。

私が今学んでいるものも、もしかすると社会貢献に役立てるかもしれない。
先の見えない子供たちを救う手助けになるかもしれないし、先の短いご老人の光になれるかもしれない。

デザインというものの定義は幅広く、そしてものすごく深い。
彼のいう”コミュニケーションデザイン”と、私の考える”コミュニケーションデザイン”は全く違うもので、人々に与えられるものも変わってくる。
そんな中で見つけられる数少ない共通点となるものが、デジタルデザイン論で学んできた真髄ではないだろうか。
その共通点とは、「色褪せないデザインを作りたい」という信念であると、私は考える。

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