G21054  メタバースの五感技術とコミュニケーション

先日、Vtuberとして活動するなぃとめあさんがTwitterに投稿した写真が話題となりました。

投稿された写真は、2022年7月16日に開催されたなぃとめあさんの握手会の様子。モニターに映ったLive2Dモデルの顔に、赤い布から出る恐らく「中の人」のものと思われる、生身の人間の手。なんともシュールに感じる握手会の様子です。

ユニークで面白い形式で行われた握手会ですが、「Vtuberはあくまでバーチャルの存在。(中に生身の人間がいるのは承知しているが、)独立した一つのキャラクターとして振舞ってほしい」という意見のファンも少なくありません。そのようなVtuberにとって、握手会のようなファンとリアルに接触できるイベントというのは難しいものになってしまいます。

Vtuberと交流できるイベントは、モニターやスクリーンにモデルを映し、ファンと会話や写真撮影などをするといった形式が主になっています。もちろんファンにとってはそれも貴重で嬉しい体験ですが、メタバースを利用すれば今までとは違う、更なる没入感を味わえるのではないかとデジタルデザインについて知っていく中で私は考えました。

Meta(旧Facebook)は、2021年11月1日にメタバース上での触覚を再現した「ReSkin」の開発の進捗を発表しました。これはメタバースの空間で架空のオブジェクトに触れると、グローブがオブジェクトのテクスチャや振動を再現し、まるで本当にその物に触れているかのような感覚になるという技術です。この技術が利用できれば、Vtuberとの交流に革命が訪れるのではないでしょうか。

例えば、ファンがイベント会場に行き、用意されているVRゴーグルをつけると、リアルタイムでトラッキングしているVtuberの3Dモデルが現れます。ファンはまるで本人が目の前に実在しているように感じ、差し出された手を握ると手にはめた触覚グローブがVtuberの手の感触を再現し、本当に握手しているように感じられる…という交流イベントが行われる日も来るかもしれません。タイムラグの問題を解決すれば、海外のライバーやファンとの交流もできるようになるかもしれません。

また、メタバースの技術は上で紹介した「触覚」に留まりません。メタバース上で売られている商品に近づくと匂いが発生する「嗅覚」の技術、舌に電気を通し甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の基本五味を再現する「味覚」の技術も開発されており、完璧とは言えませんがメタバース上で人間の五感は全て再現されています。これらの五感の技術が普及すれば、もちろん活用法はVtuberとの交流に限りません。他県や海外に住む家族や友人たちとハグができるかもしれません。病気など様々な理由で遠くへの外出が難しい人が家庭内や院内で遠くの地に旅行へ出かけ、現地の人や動物と触れ合ったり、ご当地グルメを味わったりすることも可能になるかもしれません。しかし、技術の開発によりメタバースの可能性が広がっている一方で、普及はあまり進んでいるとは言えません。現在開発されている技術がメタバースでのコミュニケーションなどで実用化されるのは少し未来の話になるかもしれませんが、デジタルデザインを学ぶ身として、そしてVtuberの一ファンとして、メタバースのこれからの躍進について注目していきたいと思います。

参考

リアルで握手できるVTuberが話題「真夜中に見たらビビりそう」https://mdpr.jp/news/detail/3259963

ReSkin(リスキン):ロボットの指先に触覚を与える人工皮膚https://chizaizukan.com/property/513/

VRで商品に近づくと“におい”を再現するショッピングシステム、NECが開発https://www.moguravr.com/nec-vaqso-smell-reproduction/

VRで食事も?!VRで味覚を再現するには?/https://vrinside.jp/knowledge/vr-taste/

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