G12019

「デザインはクライアントの求めるものを形にする仕事」というデザイナーの大前提をこの学校で学んできた。相手が求めている形はなにか、訴求性のあるビジュアルとはなにか・・・これらデザインの導入としてあるべき意識は、私の学んできたことだ。しかし、真鍋氏にはさらに前の段階がある。

それが「おもしろそうだからやる」だ。仕事として依頼がある以前から、こんなことをやってみてはどうだろ?と取り組んでいるという話が私にはなかなか衝撃的だった。仕事でもないのに自分が楽しいから作る、となればそれはもう趣味の世界だろう、と思ってきたからだ。けれど真鍋氏の「たのしいから試してみたこと」は世界中から『仕事』として求められ、成立していた。なぜ、自分の楽しさから派生したものが仕事として成立するのだろ、必要とされるのだろ・・・?答えは簡単だった。真鍋氏の作るものには根拠があり、説得力がある。楽しいから作り始めたとしても、過去にどんな作品があったか徹底的に調べてまとめていたし、常に最新の情報とテクノロジーを自分の脚で出向き吸収し続けている。さらに、何度も試作を繰り返し訴求性に裏付けも持たせている。そしてそれらの行動に加えて根底にある「楽しんで作っている」ことが何よりも強みになっていると番組を見ていて感じた。

医療用の電極を使った動画や、アーティストやスポーツ選手のパフォーマンスを見ていたときは、授業として学ぶために見ているというよりも、純粋に見ていることが面白かった。そして、真鍋氏らが楽しそうにものを作る姿もまた楽しいと感じた。ふと思い出したのは、入学したばかりの私は絵を描くことや面白いものを見ることが好きでたまらなかったということだった。見る人が私の作ったものをみて楽しいと思ってくれたらどんなに幸せだろうか、と夢をふくらませていた。しかし、今は自分が楽しんでは仕事にならないと勝手に思い込んでいた節がある。

真鍋氏のものを作り出す楽しそうな姿を見て、デザインを楽しんでいた自分を連れ戻すことができたような気がした。

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