G15-043 ”医療用ロボットについて”

SoftBankの店頭で通行人に手を振る”pepper”や、家の中を外出中に掃除してくれる”rumba”など、昨今ではロボットが身近に存在している。
世界の技術発展が生み出した様々な形のロボットは、子供から大人まで、老若男女問わず人気を博した。

小さな家庭内ロボから大きな支援ロボまで、多種多様であるロボットのさらなる可能性を切り開いた1つのロボットが、今回取り上げる手術支援ロボ”ダヴィンチ”である。

ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)は、1990年代に米国で開発された、米国のインテュイティヴ・サージカル社が開発したマスタースレイブ型内視鏡下手術用の手術ロボットである。

このロボットは1999年より発売されており、手術方法としては、小さな創から内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、医師が3Dモニターを通して術野を目で捉えながら、実際に鉗子を動かしている感覚で手術を行う。
このロボットで手術を行える病気としては、狭心症や心筋梗塞、心房中隔欠損症などの、心臓病が主となる。

ダヴィンチの強みは、3D内視鏡カメラにより、術野を鮮明な3D映像として表示出来る事だ。ズーム機能により患部を拡大視野で捉える事も出来る。

ロボットに付いた沢山のアームが人間の腕、手首、指先のような役割を担っており、先端に様々な鉗子を装着して使用する。医師の動きに連動し、組織を摘んだり、切ったり、縫合するなどの動きを正確に再現する事が出来る。
そして、このロボットには手振れ補正機能も付いており、鉗子やカメラを動かすコントローラに手先の震えが伝わらないようなつくりになっている。細い血管の縫合や神経の剥離などの作業をスムーズに行う事が出来る。

これらの機能は、今までの医療用ロボットに比べてかなりの高精度で、ダヴィンチの手術成功率はなんと99.7%である。

そして、最大のメリットは、感染症についての安全面である。

ダヴィンチが行う心臓手術では胸骨を切らない為出血が少量で、正中切開の時のような胸骨感染のリスクが少ない。創部の痛みや知覚障害も殆ど無く、早期のリハビリが可能となり、早期退院、早期社会復帰が可能になる。

上記の様なメリットとは裏腹に、やはりデメリットも存在する。

まず挙げられるのが、保険がきかないという事。
ダヴィンチによる手術を受けるには、350万円程度の高額な医療費が必要となる。
そして、この手術は誰でも簡単に受けられるという訳ではなく、特別な欧米でのトレーニングが必要である為、渡米しなければならない。
そのトレーニングにより、術後の経過が変わってくる。という事は、担当の外科医によって後の人生が変わってくるという事である。
ダヴィンチで手術する際は、担当医も慎重に選ばなければならない。

これから先、ダヴィンチが目指している進化は、新しい領域との融合も進めていく事だ。具体的には、超音波による診断、治療機能との一体化や、画像診断と結びつけた正確な位置決めや病態の理解、特定の腫瘍やがん特有の血流などを分子マーカーで特定する技術の導入、などである。

これらは、米国で先行して薬事承認が下りると見込まれるが、こうした先進技術をなるべく早期に日本にも持ってくることが出来れば、医療業界のさらなる飛躍に繋がるだろう。

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